
ご存じのように、組込みシステムにおけるソフトウェアの重要性は著しく高まっています。本来であれば、その重要性を意気に感じて日々ポジティブな生産活動を送れるはずなのですが、残念ながら今の開発現場はそれからほど遠い状況です。
いろいろな要因が取りざたされていますが、まず「ソフトウェア設計技術の欠如」がもたらす生産性・品質の悪化が根底にあり、それを「ソースコード中心の開発」でさらに増幅してしまっている、というのがこの問題の本質的な構図ではないでしょうか。
この仮説に立てば、今の組込みソフトウェア開発を変革するには、まず現場の開発者のスキルアップが最優先の課題となります。OJTの名の下に実施されている現場放任型の育成も見直す必要があるでしょう。
そして、基本的なスキルが身についた段階で、「ソースコード中心の開発」から、ひとつ抽象度を上げた「モデル中心の開発」へと舵を切るべきです。「ソースコード」が市街地図だとすれば、「モデル」はより広いエリアを俯瞰できる広域地図のようなものです。今や100万行を超える巨大な組込みソフトウェアがざらにある時代に、市街地図の「ソースコード」だけで戦うのはあまりにも不利です。複雑化するモジュールどうしの関係や、仕様追加時の影響範囲などを検討するには、もっと広域の地図、すなわち「モデル」が必要です。たとえ1,000万行を超えた規模でも、「モデル」であればエリアをさらに広げて、日本地図や世界地図のレベルで俯瞰することも可能です。
もはや、組込みソフトウェアはハード制御に徹していた小さくて簡単だった頃から、製品機能の実現のほとんどを受け持つ巨大で複雑な時代へと大きくシフトしてきています。これからの日本のもの作りの強みは、組込みソフトウェアなしには語れません。私たちエクスモーションは、お客様が「ソースコード中心の開発」から「モデル中心の開発」へと舵を切るためのお手伝いを、ぜひ現場から、そして開発者のスキルアップの段階から支援させていただきたいと思っています。

横浜国立大学卒業後、1987年4月ロジック(株)に入社。JUST-PCモデムやISDNボード、マルチプロトコルゲートウェイ等通信機器のファームウェア開発と、それらを使ったWindowsアプリケーションの開発に従事。1994年以降は、オブジェクト
指向の導入を進め、とくに生産性において大きな成果を上げる。1996年6月(株)オージス総研に入社。前職での経験を生かし、組込み分野におけるオブジェクト指向技術の導入支援事業を立ち上げる。
コンサルタントとしてFA装置や自動車、デジタル家電など多くの分野において現場支援や人材育成に携わるとともに、情報処理学会や技術者育成を目的としたETソフトウェアデザインロボットコンテスト(ETロボコン)など組込み分野における学会・コミュニティ活動にも参加。2008年9月、(株)エクスモーションを設立し現在に至る。
ETロボコンの本部審査委員長、情報処理学会主催「組み込みシステムシンポジウム」のプログラム委員。
自動車、FA装置、デジタル家電
モデルベース開発(UML+オブジェクト指向)
横浜国立大学 工学部 情報工学科
ETロボコン本部 審査委員長
UMTP 組込み部会 主査
派生開発推進協議会 副代表
「思考系UMLモデリング即効エクササイズ」(翔泳社)、「組み込みUML」(翔泳社)