では、なぜ「使えるドキュメント」が開発現場にないのでしょうか?その原因は、次の2点に集約されます。
近年のような激しい競争が強いられる経営環境においては、いち早く多くの市場を獲得することが最優先の経営課題となっています。そのため、「どこよりも早く製品をリリースする」ために、開発者は何よりも、製品自体の作り込みを優先させられます。
結果として、その時の製品をリリースするための最低限のドキュメントを作るだけで精一杯になります。それには、合意した「結果」だけが書かれ、その根拠や背景については触れられません。つまり、リリース後の派生開発で本当に必要とされる知識はドキュメント化されず、担当者の頭の中に埋もれてしまい、いつしか忘れ去られてしまうのです。
では、ただ時間があれば、「使えるドキュメント」が書けるのでしょうか?
「使えるドキュメント」を作成するためには、重要な情報を見極め、分かりやすく伝わる形にする必要があります。
そのためには、抽象化能力・論理的思考力・図解力・文章力などのスキルが求められます。それらのスキルは、プログラミングや要素開発などの開発スキルとは異なり、一般的には開発者が苦手としている分野です。そのため、たとえ育成したとしても、満足できるレベルまで到達するためには、かなりの期間と費用を必要とします。
このように、「使えるドキュメント」を作成するためには、ここで挙げた2つの問題に取り組む必要がありますが、開発者をそのまま「使えるドキュメント」の作成者にアサインすることは、現実的な解とは言えません。